世界ジオパークに立候補する背景と理由

背景

豊富な観光資源と恵まれた地理的特性

 2,300万年という気の遠くなるような時の流れの中で、隆起・陥没運動を続けている別府-島原地溝。そのほぼ中央に位置する阿蘇。約27万年前に始まる阿蘇の火砕流噴火は、九州中央部の地形を劇的に大きく変化させた。

 太古の昔から阿蘇は火の山として知れわたっており、7世紀初頭に書かれた中国の史書『隋書』倭国伝には、「阿蘇山有り。其の石、故なくして火起こり天に接すれば、俗をもって異と為し、因って祠祭を行う。」と明確にその名が記されている。山の名前が海外の文献に登場するのは、日本では「阿蘇山」が初めてなのである。阿蘇中岳の火口見学は、年間約100万人にも及び、中国、韓国を含めたアジアはもとより、ヨーロッパやアメリカからの観光客も多い。

 活発な火山活動は、時に災いをもたらす反面、豊かに湧き出る温泉、千年の草原、ダイナミックなカルデラ景観など、多くの恩恵をこの地に与えてくれた。歴史的・文化的にも、また観光面においても阿蘇は九州の中心としての役割を果たしている。

世界有数のカルデラ地形は、阿蘇が世界に誇る貴重な財産

 阿蘇カルデラは、東西約18㎞、南北約25㎞の大きな楕円形をしており、世界有数のカルデラである。また、中央に活火山を持つカルデラの中に、約5万人の人々が暮らす世界でも珍しい場所としても知られており、火山と共生する人々の文化と歴史は、現在「世界文化遺産」の暫定登録にも申請中である。

 阿蘇中岳火口や周辺の地形・地質、カルデラおよび外輪山の渓流、草原などのジオサイトは、百数ヶ所あり、市町村にとっては地域の貴重な財産にしていくことができる。

神世を語る阿蘇神社と農耕祭事

 火の山の神であり、阿蘇の開拓祖である健磐龍命を中心に十二の祭神(農耕神)を祀ったのが、阿蘇一の宮の阿蘇神社である。阿蘇神社の創建は、2,200年以上も昔にさかのぼり、阿蘇家宮司は91代目である。健磐龍命は、健々しく岩が立つ状態を神格化したもので、最初は中岳火口に立つ巨岩だったが、その後、農耕神の性格が与えられ、さらに阿蘇カルデラを南北に分ける阿蘇谷の黒川や南郷谷の白川の水源としての水神にもなったという。健磐龍命は、火山と農耕が共生する人々の暮らしと密接に繋がりあった自然神と人格神が合致した神なのである。

 阿蘇の一年は、阿蘇神社の農耕祭事で始まり、農耕祭事に終わる。阿蘇神社で行われる一連の祭りは、国指定重要無形民俗文化財に指定されており、地域の習俗の源流ともなっている。阿蘇神社の農耕祭事は、春の火振り神事に始まり、夏の宇奈利(おんだ祭り)、秋の流鏑馬(やぶさめ)、そして冬のゴマ木まきなど、四季折々に繰り広げられる固有の伝統行事が、火の神、水の神を称える農耕祭事として続けられ、阿蘇地域を彩る多彩な文化の真髄である。

 阿蘇ジオパークは、「火山との共生」によって培われた世界的にも特異で貴重な文化の地といえる。

立候補する理由

 阿蘇カルデラを中心とした阿蘇地域一帯は、昭和9年(1934年)に日本初の国立公園の一つとして、「阿蘇国立公園」に指定された。その後の区域の拡張などを経て、昭和61年(1986年)に「阿蘇くじゅう国立公園」に改称され、現在に至っている。この広大な地域には、変化に富む地形や景観が展開し、そのことが阿蘇特有の風土、動植物相、人々の暮らしの中の文化を育んできた。特に、阿蘇カルデラは、世界有数の規模を誇ると同時に、その形態を明瞭に残していることから、その姿に誰もが触れることができる。また、阿蘇中岳火口はもちろん、外輪山一帯においても、数次にわたる大規模火砕流がつくった貴重な地形・地質遺産が多く存在する。これらの地形・地質遺産を保護・活用しながら、地域の持続可能な社会・経済発展を育成し、また環境問題等に関する教育・普及活動を行うことが、今後の課題である。したがって、阿蘇ジオパークは、世界でも貴重な地形・地質遺産であるとの認識を持ち、この地で培われた歴史的・文化的な財産を誇りとして感じられる阿蘇ブランドの確立と地域の発展、地質遺産の次世代への継承を目標とした取り組みを進めていきたいと考えている。

 特に、阿蘇ジオパークのテーマでもある「阿蘇火山の大地の成り立ち、並びにこの大地と人間生活との関わりに対する理解を深めること」は、阿蘇地域に訪れる人々にとっても、阿蘇地域に住む人々にとっても、数千年の時空を超えた感動を呼び戻してくれる。本地域では、平成14年(2002年)から「スローな阿蘇づくり・阿蘇カルデラツーリズム」を推進してきた。この大きな柱が、阿蘇の大自然を活用したエコツーリズムである。阿蘇が世界ジオパークとして認められることにより、阿蘇の火山の地形や地質、外輪山の草原などの自然が繋がりあった基本的な枠組みが明確になる。阿蘇ジオパークでは、滞在交流型観光をめざす阿蘇カルデラツーリズムを推進することにより、阿蘇の地形・地質遺産を活かした新しい旅のスタイルを確立する。「ジオパーク」の目的は、保護と活用である。このジオパークの考え方を活かし、世界ブランドの獲得により、阿蘇の価値を高め、地域の活性化を図っていくために立候補したものである。今後、よりよいジオパークに育てていくために、世界ジオパークネットワークに加わり活動を展開していきたい。

図6-1 阿蘇中央火口丘ジオツアーの様子(阿蘇市)
図6-1 阿蘇中央火口丘ジオツアーの様子(阿蘇市)
図6-2 北外輪渓流ジオツアーの様子(南小国町)
図6-2 北外輪渓流ジオツアーの様子(南小国町)
図6-3 南外輪原生林ジオツアーの様子(南阿蘇村)
図6-3 南外輪原生林ジオツアーの様子(南阿蘇村)
  • 阿蘇ジオパークの紹介
  • 阿蘇ジオパークの魅力
  • 世界ジオパークへ向けて
  • ジオサイトについて
  • 阿蘇のジオサイトマップ
  • ジオツアー
  • 阿蘇ジオパーク推進協議会会員一覧

阿蘇ジオパーク関連動画