湧泉

 阿蘇カルデラとその周辺には、一般に火山地帯で見られるような多くの湧泉が存在する。湧泉の数は1,500ヶ所以上にのぼるが、湧水機構は複雑で、その全てが解明されているわけではない。

 湧泉の代表的なジオサイトとしては、「宮地・役犬原地区湧泉群」、「南阿蘇村湧泉群」および「外輪山の湧泉群」が挙げられる。

宮地・役犬原地区湧泉群

 阿蘇市一の宮町宮地から役犬原地区にかけての一帯には、広い範囲で自噴する多くの湧泉(図1)が見られる。これらの湧泉をつくっている地下水は、主に中央火口丘群の東部の火山斜面で涵養されたものと考えられるが、一部には外輪山からの地下水が関与しているとされている。これらの湧水はいたるところで、生活・灌漑用水として利用されている。

役犬原地区の湧泉(阿蘇市)
役犬原地区の湧泉
(図1)
(阿蘇市)

南阿蘇村湧泉群

 南阿蘇村では、主に白川以北の中央火口丘群山麓扇状地の扇端付近や、扇状地を削り込む侵食谷などで、多くの湧泉が認められる。これらの湧泉群の湧水は、中央火口丘群の主に南斜面での涵養によるものと考えられる。これらの湧泉群の代表的なものは、日本名水百選にも選ばれている「白川水源」であり、すでに多くの人々が訪れる観光スポットとして、活用されている。

外輪山の湧泉群

 阿蘇カルデラのカルデラ壁の下部は、先阿蘇火山岩類や沖積錘や崖錐性の斜面からなる。また、カルデラ壁の上部には厚い火砕流堆積物が露出している。さらに、外輪山の外側斜面には広い範囲で、火砕流堆積物が堆積している。外輪山に関係する湧水としては、いずれの地質からも認められるものの、火砕流堆積物に関係するものが重要である。火砕流堆積物が溶結した溶結凝灰岩の割れ目から、大量の湧き水が認められる。その代表的なものとして、「舟の口水源」などがある。また、非溶結の堆積物に関係すると考えられる湧泉が「池山水源」である。これらの湧泉は、すでに観光地として活用されており、水汲み場としても地元をはじめ遠方からも多くの人をひきつけている。