外輪山地域

 阿蘇カルデラの形成に関わった巨大な火砕流の堆積物は、総称して阿蘇火砕流堆積物と呼ばれる。阿蘇火砕流堆積物は、カルデラ縁およびそこから周辺へ広がる外輪山斜面を構成する重要な地質の構成要素である。その分布は広く、カルデラ周辺のみならず九州の中・北部のほぼ全域の基盤山地のつくる谷部に広がっている。

4回の巨大噴火による阿蘇火砕流堆積物の分布
4回の巨大噴火による阿蘇火砕流堆積物の分布

 火砕流堆積物に関する代表的なジオサイトとして、小国町の「鍋ヶ滝」および「遊水峡」が挙げられる。  鍋ヶ滝は、滝幅約25m、高さ約9mの溶結凝灰岩にかかる滝である。固い溶結凝灰岩の上を水が流れ、その基底部の軟らかい部分は侵食され易いために、落水下部の背後が奥行き10m以上にわたって抉られ、裏側から落水を眺めることのできる特異な滝である(図1)。

 遊水峡は、幅約10~30m、長さ約800mの岩盤河床で、平滑河床も発達する。この地形は、阿蘇火砕流堆積物の強溶結部分で河川の侵食が停滞してできた河床である。清らかな浅い流れは、観光客の憩いの場であると同時に、火砕流堆積物の性質と河川侵食との関係を理解するために大変貴重である(図2)。 外輪山地域に存在するその他のジオサイトとして、「蘇陽峡」、「池山水源」、「押戸ノ石」、「白糸の滝」などが挙げられる。

鍋ヶ滝(小国町)
鍋ヶ滝(小国町)
(図6)
遊水峡(小国町)
遊水峡(小国町)
(図7)